2021/12/24
三篇 巻之8 〔2〕 鬼神が導き給うた
人の世にあって物事を行うのは、みな鬼神の導きたもうことと知るべきである。善に赴くも悪しきに陥るも、その初めは鬼神の善きに導き給うを、己が人の欲にひかれてあらぬ道に赴くのである。
わしがかつて思い切ったと思う事も、今よく考えると、何れとも鬼神の戒め給うた事によるものだと思うのだ。
その頃は肩を並べて権威があったと思える者も、末は俄かに沈下し、再び盛り返し時めくのを観ると、如何ばかりかその間の困苦は云うばかりの事だ。
吾等の如きは、一端の無念愁恨は限りなしであろうから、歳月を思い返すに、世の移り変わりを見聞きするにつけても、我などはさぞや凌辱を蒙るだろう。
誹りや嘲りに与(あずか)るほどだろうと思うと、世外の身など寸志の奉公、祖先への孝志も出来るものだし、これこそ天命を楽むとも思えよう。
それにつけても、不義にして富など聞こえてくのるも、恐れるは人の上であった。
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