三篇 巻之8 〔2〕 鬼神が導き給うた

人の世にあって物事を行うのは、みな鬼神の導きたもうことと知るべきである。
善に赴くも悪しきに陥るも、その初めは鬼神の善きに導き給うを、己が人の欲にひかれてあらぬ道に赴くのである。

わしがかつて思い切ったと思う事も、今よく考えると、何れとも鬼神の戒め給うた事によるものだと思うのだ。
その頃は肩を並べて権威があったと思える者も、末は俄かに沈下し、再び盛り返し時めくのを観ると、如何ばかりかその間の困苦は云うばかりの事だ。

吾等の如きは、一端の無念愁恨は限りなしであろうから、歳月を思い返すに、世の移り変わりを見聞きするにつけても、我などはさぞや凌辱を蒙るだろう。
誹りや嘲りに与(あずか)るほどだろうと思うと、世外の身など寸志の奉公、祖先への孝志も出来るものだし、これこそ天命を楽むとも思えよう。

それにつけても、不義にして富など聞こえてくのるも、恐れるは人の上であった。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

百合の若

Author:百合の若
FC2ブログへようこそ!

検索(全文検索)

記事に含まれる文字を検索します。

最新の記事(全記事表示付き)

訪問者数

(2020.11.25~)

ジャンルランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
890位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
歴史
131位
サブジャンルランキングを見る>>

QRコード

QR