巻之47 〔12〕 暗闇の中で矢を射 る太郎助

 津侯(藤堂和泉守)の臣に玉置太郎助と云うものがいた。
この祖は高虎朝臣の時の人で、大坂陣のとき弓述で高名をはせたこと7度。
因みに高虎は初め150石を与え、後300石を与えた。

 この高名の弓は、今に伝わるその家の重器となった。
この弓と云うのは、黒塗栗色藤であり、わずか6歩位の弱弓で、金粉で銘じてあり、この弓は弱いと云うが、敵7人を射倒すとの話がある。

 高名である中で、如何にした時か、敵の足の裏に矢が中(あ)たった為に敵が倒れたのを、太郎助は速やかに首を取って高名になったと云う。

 これはまぐれ矢なので、その朋輩より弓の弱きを咲(わら)う者があって、かの銘は自らしたことだと云う。

 この太郎助は、吉田六左衛門元直(弓の名家である)の門弟であり、元直が未だ藤堂家に入らぬ前の弟子であったとよ。

 また夏の御陣のとき、暗夜に高虎の陣の辺りに何かきりきりと鳴る音がして止まなかった。
高虎は怪しんで、太郎助に命じて射さしめた。暗黒の中、その者に何者か聞いたが、一発で即音は止んだ。

 人々はまた不審に思い、翌朝に視てみれば、柳の枝が裂けていたのを風が吹いて揺るがして音が出ていたのを、太郎助が矢をそのわれめに射中てて、音が止んでいたのだと。

 人々はその暗中といえども音を聞きあて、射て所を違えなかったのを感賞したのだと。

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