巻之40 〔3〕 天子さまの福祚(天子様のお祈り)

 10月の初めに普門律師(円通、1754~1834、天台宗僧)に会って話を聞いた。
天子の勅願所のある寺は、その檀に於いて宝祚(ほうそ、幸福)長久を祈ることである。
ここは京の知恩院、三州大樹寺、鎌倉光明寺などにある。
あれば必ず勅願(天子様の祈願)をかくと語るので、東都両山にもあったかと尋ねると、上野はあるが芝はなしという。

また訊いた。
上野はいずれにあるか。
瑠璃殿(現在の新宿区)にありと。
殿の額はすなわち宸筆(天子さまの直筆)である。

また問うた。
この檀には御なでものと云う物があって、これを置奉って、御祈りをなす。
これは何れも勅封(天皇の命令で封印すること)にして開くことはない。
大佐の局より進退するとのこと。
律師も今上の御祷を御幼年よりされたゆえ、ある日青蓮院(天台宗の京の寺院)の宮に、かの中のものは如何なるものぞと問い申したら、中には御鏡が一面あり、と。
これに天子が自ら御冠服を着せられて、かたじけなくも尊容を照らし留め給い、終わって御衣(おんぞ)に包んで、櫃(ひつ)におさめて勅封されたと。
これを以て、玉体(天皇の御体)にかえ、福祚を祈り奉らると。
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