続篇 巻之28 〔21〕 出火による死者

 6月20日昼望楼(ヒノミ)で版木を打った。
何方の出火なのかと尋ねると、池の端だと答えた。
火元を見に人をやれば、あわてて帰ってきた。
「小日向みょうが谷の龍泉寺が自ら火を出して類焼にはならなかった」と云う。

 なるほど半時(1時間)ほども消化の鐘は鳴らなかったと思う。
後に人に話を聞くと、表門は残っている。
後はすべて焼失してしまった。
住持は他に出かけていて、留守の僧1人と住持の弟僧が乱心をして囲いに入れ置おいたが、急な火の手ゆえあわてて囲いを開けずそのまま焼死させてしまった、と。
留守僧の死は如何なるゆえか、明らかにされていない。

 また聞いた。この時の焼死した僧は4人という。
1人は前の如し。
2人は件の乱心僧を囲いから出そうと囲いに入り、火の手が及んで3人焼死したと。
或はこうも考えられるか。
1人は住持だったかな。
何れが是なのかよくわからぬ。

 またこの寺は『江戸砂子』にも載せなかった。
人が云う。「臨済禅徳雲寺、俗に藤寺(藤の樹があるから)と呼ぶ隣の寺であり桜の樹のある処である」と。

 またある人が云った。
この龍泉寺は洞家、茗荷谷のしばり地蔵と云う仏像のある寺である。
すると『江戸砂子』に出ている徳雲寺の隣の寺である。
この3月21日に1昼夜の大火の被害者 数百人の死亡に比べれば、1寺のわずかな時間の火に、死人の多き事、如何に如何に。
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