巻之57  〔1〕 和田酒盛りと盃に思うこと   その3

 林子はこの言を聞いて、『延喜式』を見たと云った。
すなわち造酒司の条を見ると、造御酒糟法とて、酒八斗、料米一石、糵(ひこばえ)四斗、水九斗と見え、また御井酒四斗、料米一石、糵四斗、水六斗と見える。
これによると、前者は片白で御井酒は諸拍だろう、と。
これについて云う事あり。
平戸城の恒例に農夫の舞を覧ることがあった。
七月十八日であった。
舞う者、囃子の者数十人舞終わり、これ等に酒を与えた。
台所の吏がこれを行った。
このとき農夫に伝達したのは、「今日のことにつき、上より片白を下さるということである。
農夫だから諸白は無いと申し渡しは旧例である。
この酒の製は米を中白に搗いて、水も分量を多くして造る。
考えると『式』の酒八斗と云うものに当たるか。
すると『式』の糟法は前者は片白である。
また平戸で諸白と云う製は、米を上白に精(し)らげ(米は上品を用いる)、水も分量は少ない。
考えるにこれ『式』の御井酒に当たる。
ならば『式』の後書のものは諸白であろう。
(前の農夫は志自岐神領の者であり、この舞も志自岐神社の御田の野楽である。平戸城に縁があることは、大永(1521~1528)、享禄(1528~1532)の頃か、軍事において勝利の吉例による。今平戸の俗ジャンガラ踊りと云う。これは数人の腰鼓と鉦とを打ち鳴らす。その音の響きからこのように聞こえるのでこの呼び方である)。

終わり
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