三篇  巻之50  〔13〕 鼠の害ありて

 清水殿、保之丞と称し申すのは、大御所25の公子でおありになるが、出て清水の館を継がれたが、過し文化10年(1813)6月に逝去された。

 ある人がこの頃語ったことよ。
ある時丞君に従って往くと女輩が何か騒いでいた。
その申すには、「鼠が殊に害を為して、昨夜も大切な御器を噛んで損じてくれたんだよ。だから今夜は罠をしかけて、鼠どもを殺さなきゃ」と。

 聞いていた丞君申し給うには、「器を損じるは実に悪(にく)いね。けれど罠をしかければ、餌を貪るのは他の鼠かも知れないよ。これが罠に入るかも知れないね。時期が来たら器を噛んだ鼠も横死(不慮の死)するよ。小獣と謂えども憐れなものだね。どっちにしても器を害した鼠が罠に入るのかな」と。

 女輩は理に伏して返す言葉もなかったと。
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