三篇  巻之35 〔16〕 唯聞察耳

 (丁酉、天保8,1837)7月5日に、西帰の人を送ろうと品川へ往くと、帰りにかの人は云わないが、来客の中語ったのは、この頃、浦賀の辺りに異国の舶が来たと。
「本当か」とわしは云った。
「知らないです」と相手は云う。
「定めてまた諳厄利亜(イギリス)の侶(りょ、共)だろうか?」と帰ってから書を携えてある人に問うた。
答えに「然りでございます。こんな事があったのでございます」。
はや昨29日に出帆して、何処に去ったのか、その所を知らないと云う。
但し小田原城と川越侯の人数、一番手二番手までの士卒は出張して、銃弾を放って近寄らぬように使(しめ)たら、異船は澳(おき、水が陸地に深く入り込んだ所)に懸って、吾が漁舟に木綿に漆書きをしてものを投げ与えたと云う。
一帛(ひときれ)には漢字で記し、一は蛮文を書いてあったと。
計るに薪と水を乞いていたと。
ある人(!)は未だ蛮書を視ず。
唯聞察耳(ただ聞いたことを察したのみ(耳))。
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