巻之9  〔22〕 力士が束になって掛かっても少女1人に適わない

 先年谷風梶之助と云う大関の相撲があった。
横綱を免されて、寛政の上覧にも出て大力量の大男である。
ある時、何事かその弟子のことで立腹して、その者を連れて来て、搏殺するように怒っている。
楼上に居て、多くの弟子どもは代わる代わる楼に行き、侘びを言うが承服しない。

 後は誰でもこれに関わる者に搏殺するようにと言って、いよいよ怒っている。
とうとう寄り付く者はいなくなった。

 1人才覚ある弟子は考えて、谷風の年17になる妾に頼んで、「あのように怒られては致し方がない。何とぞ機嫌を直し、楼より連れて来て」と云えば、妾は心得て楼に上り、谷風の手を執り、弟子中一同にお詫びを申した。

 「下におり給われ」と手を引き下りると、谷風は「応々」と言いながら、少女に牽かれて楼より降り、事は済んだと云う。

 後にその弟子どもが云うには、「このように多数の力士の力も、少婦1人には適わない」と、皆々かの才覚に伏す形となった。
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