巻之四十九 〈一三〉 壱岐、対馬のこと

領分壱岐は、孤島といえども流石に一国であって、産物も多い。
モグラはかつて無し。
長く続く畝もその害を免れ、花卉を庭園に植え、及び手入れする者はその妨害がない。
わしは常に戯れ言をする。
嘗て黄門光圀卿、文蛤白小を常陸の磯浜、潮来湖に放ち、長年滋息して、民はその利益を頼るほどだった。
昆布は唯松前に出るのを、その石を松前から取って、大津浜に置かれる等の事までされたとのこと。
これとは反するが、もし何者かがモグラを壱岐に放てば、その子は繁茂して一国の災いになるだろう。
また虎を六十州の土地に放すなら、これも本邦の永き災いになる。
この様なことをやる人は無限地獄に墜ちて、永く悪業の苦を受けるだろうと笑うと、またこれと反することがあった。
対馬にはタヌキがいない。
昔年、宗家の臣に某と云う人がいて、狸の害を断つと誓った。生涯辛苦して、遂に一国の狸の種物を尽くした。
その人が常に云ってた事は、狸も天地間の動物の一種である。
その種を尽くすのは不善である。
我は必ず子孫は無かろうと云ったのが、果たしてその子孫今は絶えたという。
対馬の老臣大森繁右衛門が話したと、林が話してくれた。
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