巻之49  〔18〕 時世に随い降りて行くものとは。

 府の俳優坂東彦三郎(今は楽善と云う)が若い時、これも俳優で名人と云われた富十郎(慶子号する者。
その頃年は既に70になっていたかと)が、京都より下るのに、芸の事を問う中、富十郎曰く。
「この地の人の舞を見ると、扇を開くに右手ではっと披(ひら)く。左手に何もない時、右手だけを振って披くのはいかがか。我等の舞は右手に扇を持って、左手で開いたものだが」と。

 流石上手と呼ばれた人、古風な穏当なことよと思うし、今も忘れられないと、彦三郎老後に物語ったと。
このような俳優も昔人は優美である。
何事も時世に随い降りて行くものである。
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