巻之10   〔41〕 紀伊の太真殿の大井河渉り

紀伊の太真殿が大井河を渡られたこと。
わしの先年帰国の途中、大井河に往きかかり霖雨(長雨)の後満水して中々渡れなかった。
それで10日余りも嶋田駅に滞留していた。

この時日々河の許に出て水勢を観に、川越の者も出あい、彼等と話していた。
すると虎平、強、。右衛門と云う2人が何れも俠者(きょうしゃ、弱者を助け強者をくじく)で川越の魁であったが、云うには、1両年前河の水が満ちて渡り難きとき、この公(太真殿)が御行かかり、御渉のことの御尋ねがあった。

中々渉りがたいとの由申し上げたら、さらば御自身で御渉りしようと御衣服を脱がれ、われら両人に伊達なる3尺手拭いを下され、両人裸身に襷をかけ、太真公はわれらを左右に率えられ、水中の瀬踏みをさせ、この襷を執らせられ、漲(みなぎ)り下っていく奔流の中を横切り、遂に向うの岸に至り、怖ろしくも猛き殿さまで、かの俠夫の2人も舌を巻いたと。

この体なので、従行の人馬も我劣らじと、衆力を与え、ゑい声を出して、必死の勢いで渡ったとのこと。

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