続編 巻之七十 〈一一〉 狐つき

わしの身内に茶道をする老婆がいる。
年七十余りで気持ちの安定が常でない。
狐つきらしいと思われ、よく未来を云い、過去を説いては違わない。
動(やや)もすれば、ここに居れば害に遭うと云っている。
人がその側を離れれば、逃げ出そうとする。
家内では憂えている。
それで祈祷者に占わせた。
ガマの目の法を施せば、この妖魔は去ると云う。
わしは仄かにこれを聞いた。
「どうしてガマの目の法を行うと去るのか。早く邸中の年少の者に、かの家に就て指矢を射させるのだ。そうしたら、妖狐は即去るだろう」。
未だかつてこんなことはなかったが、老婆が云う。
「日を置かず、ガマの目の法を行って下さい。そうすれば、速やかに去るでしょう。やらないと死んでしまいます」。
これで老婆は正常に回復した。奇跡だ。
この老婆は、もともと聾だったとここで聞いた。
狐つきの間はよく人の私語を聞き、また話を細かく弁じていた。
狐は去り元の聾に戻った。これもまた奇跡である。
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