巻之4   〔13〕 松平乗邑の茶事

 松平乗邑(のりむら、のりさと、江戸中期の大名・家老 1686~1746)は、茶事を好まれる。
原田順阿弥と云う同朋頭はこれも茶事に詳しいので、(乗邑は)気に入り、折々招かれた。
あるとき茶会にて順阿弥が詰めたとき、会席に柚みそ(ゆみそ)を出された。

その後順阿弥は、「この間は御庭の柚とり立てで、格別の香がします」と云った。
乗邑は「何ゆえ庭の柚と云ったか」と聞くと、「御路地へ入るときと、退去のときと、御庭の柚の実の数が違っております」と答えた。
「油断のならぬ坊主よ」と乗邑は云われた。

それほど懇意であったが、ある時政府で何か茶事の咄があって、乗邑の云われる数奇事(茶の湯の風流の道)を、順阿弥は感じて「さてさて御手に入りまする」と申したのを乗邑は怒られ「不礼である」とのこと。
順阿弥は恐れて、4,5日病と云って籠った。

その後同寮の者に「順阿弥が見えないが、如何にしている」と乗邑が申されると、「順阿弥は病でございます」と答えた。
「最早病もよいのだろう。出るように」とあったので、翌日より出勤したとのこと。
その厳しさ剛さもこの通りの人であった。
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