2020/08/26
続篇 巻之四十六 〈一五〉 死刑の者の首を斬ること
一日、三上候の処で犬追物を観た後、談話の次に候曰く。成瀬素人〈犬山城主〉の臣に某がいる。
我が方に久しく懇来している。
この男は心が剛なる者、段打ちをよくやっている〈この人は試しものの時、腰車といって骨が五重あるところを六度切通した手練であると〉。
ある日云うには、某の人斬りの門人となったので、死刑の者の首を斬ること度々であった。
さてそねな斬らんという時は、胸中に今刀を下さんと思えば、罪人は息を外へつくことなく、アッアッと内へのみ引く。
その為、その苦慮を見れば自ずから酷くおもう。
だから、今に斬らんという時は、おのれは無心になれば、罪人も一向心がつかず、平気になるものである。
そこで、首を打ち落とす。
死んでいく者ではあるけれど、しばらく苦痛を与えぬが善しと思い、この様に為るとのこと。
人と人の間の事なのだが、心気自ずから相通ずる所があるから、不思議なものである。
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コメント
No title
2021/01/08 14:00 by Nagamata URL 編集
No title
はい。今日のこの文は衝撃的に思いましたが、やはり苦しまずに逝ってくれと祈る様な思いだったでしょう。山田浅右衛門も。
2021/01/08 14:01 by 原田 URL 編集