続篇 巻之八十四 〈一三〉 チョマ、女子の呼び名、死者の名


わしの領内に小値賀と云う島がある。王代の肥前国、値嘉嶋(チカノシマ)である。
ここの里の俗だが、女子の名を梅あるいは桜と呼ぶので、世人とは子となっている。
また切支丹の宗門改めは、海内の普く所でやることにしていて、辺鄙なので、この島など専ら人別に改めをする。
ある時、役人が帳面の人名と引き合わせ改めていた。
「チヨマ」と云う者がいた。
だから、「チヨマ」と呼ぶと、右は死亡した者だと云う。
役人は「死者を書き出すとは何事か」と叱った。
相手は答えて、即「チヨマはここにおりますゆえ書き上げました」と云う。
役人は「これは何だ」と云うので、「死亡した者はチヨマ、兄でございます。そしてこれはチョマ、妹でございます」と云った。
役人は、「ならば、なぜ字を分けて書き出さぬのか」と咎めた。
相手が答えて云うには、「ごもっともでございますが、もとより字はなく、ただその名を呼ぶだけでございます」。
どうやら、この地では女子のベッピン者を大抵「チョマ」と名付けて、別に名はないようだ。 
これはその親が他人に誇る事である。
だから所々で同じに呼ぶ女子があるとのこと。
辺鄙な場での風俗である。
口申    衝白
一紙は経解字説が、一紙は遠坂の風俗。一一詳細に文義を明晰し、読み終えて大いに発明の事あり。珍しきが存奉り候。このニ紙とも近来の御出来、いずれもワル口宗も口をつぐみ、一言も御坐無き候。敬々服々。稽首(けいしゅ、末尾のあいさつ)。
十一の十六。
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