三篇  巻之72   〔11〕 真赤虚談(マッカナウソバナシ)

 閏正月14日の夜のこと。
 元来川端多田薬師の脇隣に、紀侯の用達(ヨウタシ)が居宅していた。
すこぶる富んでいた。
故に押し込みの賊が10人来て、先ず家の者をみな縛り、器財を奪い一旦たち去った。 

 またその隣には浪人が居住しており、その夜は剣技を以て諸国を修行する者が2人、暇乞いをしようと、その家に来ていた。

 賊の騒ぎのときに丁度居合わせたので、持ち合わせの木刀などを3人(浪人と修行の2人)手々に執って賊の脛を薙ぎ払うと、賊は各々倒され残りなく捕らえられた。
家人の縛りも解かれ、奉行所へ訴えた。

 ところが、種々の雑事に取り調べは及んでいくと、店の出金が多い。
幸い近所に同心も(同心は官庁の下吏)居たので、彼(主人)は、(浪人たちの)手で捕らえられる様に、相謀(賊と共謀)をするに落ちてしまったと云う。

 わしは辺りの藝花(ウエキヤ)、市長(オオヤ)等に真相を質問したが、何も知らないと云った。
よってまたはじめに話したことは、信州の農夫が都下に久しく居る者ならば、誰より(事の真相を)聞いているだろうと問うた。
すると近所の少年の某が云ったと。
すると信州の農夫をだましたか。
世に謂う「真赤虚談」である。

  また云うには。
賊の中の3人は刃を持ていた。
7人は赤手(セキシュ、素手)である。
けれど隣の士も、その刃の為に創(キズ)を受けたが、浅疵なので3賊に勝つことが出来たと。
これまた亡説の余である。

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