巻之12  〔11〕 御上と天の空模様

 6月山王の祭礼はいつも賑わしいことである。
去る庚辰の年見物に往ったがかねて何処からか内意があるからと花麗なることで、諸人が近年になく壮観だと云っていた。

 それなのにこの壬午年の祭礼にはわしは出向かなかったが、人が云うにのは当年の祭礼は質素に心得よと予め町役より申し付けられたので、町方の諸人もその心組で、美麗の装飾も差略したいた。
が、そのみぎりになって何処よりか指図と云って祭礼に出る者に対し華美と云うではない、身分相応に見分よくするようにとの沙汰があった。

 それで祭礼に出る者は俄かに心組の方向を違え、止められた装束も再び忽(たちま)ち飾りなおした。
こうして大いに混雑したことであった。

 天上風雲の変化界の難言(なんという)ところであろうか。
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