巻之61  [20] 狐の毛玉、雀の毛玉

林子が話す。
日頃営中で、本多豊州[田中候。寺社奉行]に邂逅したときに、「某邸[数寄屋橋内]の稲荷祠を当初午に間に合うように、正一位を勧請しまして、口宣(くぜん、口頭で勅命が伝えられること)到来しましてね。
社壇へ納めた翌朝、壇上に狐の玊があったと持参しました。
その日営中に伺われる面々へ示したのを見ましたが、形はこれまで見たことのある毛玉ではないのです。

ただ珍しいことには、毛色が黒白に斑でした。
いかにもその時に偶中したこと、頗る奇と謂えるでしょう」と言った。

またその坐に大河内肥前守[御普請奉行]がいて、「高井山城守[大阪町奉行]は嘗て御目付を勤めていたとき、肥州殿(静山公の後継)の同僚がその節山州の話をしました。
1日椽先に雀が群れていましたが、何気なく見ていると、1雀が立ちながら片翅を少し開き、嘴で羽虫をとるかに見えましたが、小玉がはらりと落ちたのです。

それで山州が坐を立てば、雀は驚いてみな飛んでいきました。
その跡に毳玊(けばだま)があったのです」。

指の腹ほどにして、色は雀の腹毛と同じようであったと云う。
これまた聞いたことのないただの奇事であったが。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

百合の若

Author:百合の若
FC2ブログへようこそ!

検索(全文検索)

記事に含まれる文字を検索します。

最新の記事(全記事表示付き)

訪問者数

(2020.11.25~)

ジャンルランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
890位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
歴史
131位
サブジャンルランキングを見る>>

QRコード

QR