2022/10/01
巻之61 [20] 狐の毛玉、雀の毛玉
林子が話す。日頃営中で、本多豊州[田中候。寺社奉行]に邂逅したときに、「某邸[数寄屋橋内]の稲荷祠を当初午に間に合うように、正一位を勧請しまして、口宣(くぜん、口頭で勅命が伝えられること)到来しましてね。
社壇へ納めた翌朝、壇上に狐の玊があったと持参しました。
その日営中に伺われる面々へ示したのを見ましたが、形はこれまで見たことのある毛玉ではないのです。
ただ珍しいことには、毛色が黒白に斑でした。
いかにもその時に偶中したこと、頗る奇と謂えるでしょう」と言った。
またその坐に大河内肥前守[御普請奉行]がいて、「高井山城守[大阪町奉行]は嘗て御目付を勤めていたとき、肥州殿(静山公の後継)の同僚がその節山州の話をしました。
1日椽先に雀が群れていましたが、何気なく見ていると、1雀が立ちながら片翅を少し開き、嘴で羽虫をとるかに見えましたが、小玉がはらりと落ちたのです。
それで山州が坐を立てば、雀は驚いてみな飛んでいきました。
その跡に毳玊(けばだま)があったのです」。
指の腹ほどにして、色は雀の腹毛と同じようであったと云う。
これまた聞いたことのないただの奇事であったが。
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