巻之四 一一 農夫八弥、瘤とり

肥前の彼杵郡佐世保に八弥という農夫がおった。
八弥の左の胸にはみかんの大きさの瘤があったと。
夏になると、名切の谷のお堂に仲間が集まって暑い夏を涼んでいた。
お堂には観音様が座っておられた。
八弥は夕方早く来てみんなを待っとった。
そのうち眠うなってうつらうつらなってしまった。
しばらくして観音様は立ち姿で、八弥をジッと見つめていた。
そして八弥の前に進み出て、
「お前の瘤を取ってやろう」と云って、八弥の手を取って、胸の瘤を引っ張った。
八弥はあまりの痛みに気を失った。
八弥は、「あ、こいは夢やったとばい」と思った。
が胸を触ったら瘤はなかった。
人々は不思議だと云った。
「八弥は観音様ば信じとったか?」。
「うんにゃ、瘤ば取ってと頼みもしとらんぞ」。
この不思議をみんな信じられんかったと。
昔、鬼に瘤を取られたという寓話はあっても八弥はそう言えんたいなあ。
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