三篇  巻之57  〔9〕 仏法も世法も嘆かわしきことあり

 世には仏法も世法も嘆かわしきこと共あり。

まず増上寺中のわしの宿坊の住持某は、甚だ弁才があって、その坊の修理など結構し、頗る檀家へも功ある僧であるが、寺社奉行より女犯のことが露顕して、遠流に処せられたと聞く。

 またわしの側らに久しく仕えていた女が家に帰り、八丈島に通じる問屋の妻になった。
ある日この婦人が来て
「伊豆の島々の中、新島は一島みな法華であって、他宗はないのですよ。
だから僧が遠流されてこの島に到ると、浄土真言何宗の差別なく、改宗して法華と為ることが、殆ど定法のようで、若しその宗を重んじて否とすれば、一島挙げて関りを持たないのです。
そうなると大抵の人は改宗しますけど。
先年ある僧が、堅くその宗旨を守って法華に従わなかったのですが、竟(きょう、おわりに、遂にの意)に餓死して人が葬ること莫く、野中のものと成ったのですよ」。

 実にこれ仏法の真ではない。
世法の至りと為ったのか。如何に洋中隔島の俗とはいえ、嘆かわしいではないか。
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