巻之2  〔5〕 京の総撿校の神祖(家康公のこと)拝領の御壺

 豊川勾当が話した。
 京の総撿校の所に、嘗て神祖に賜いた御物どもがある。
1つは色ある大壺〔色は忘れた〕に葵の御紋がついていた。
この壺の故は、そのはじめ三宅撿校(その称を忘れたので、正すべし)に賜ったもので、その時撿校は「この壺の名は何と申しますか」と申し上げると、御答えには、「名は無し」。
「今このような治平の世となるならば、泰平の壺とも云うべし」との上意にて、撿校は忝(かたじけな)く拝領している。

 それより今にその御名を伝称して、年首(年のはじめ)の佳儀には、撿校勾当の盲人は、みなこの御物を拝し奉り、中に入っている酒を頂戴して礼飲したと云う。

 また鳴戸と名付けた御琵琶も、同じ撿校賜って、今に伝える。
これも上意には、「戦争の際にはこのようなもの用に立たず。今治安なればこそ、平曲〔平家である〕の如きも心安く聴くべし」。
因って下された。
今に至って総禄所の伝宝となった。
盲人の坐までも御手の届くこと不思議なる計りであった。

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