続篇  巻之73  〔6〕 『四席懐石誌』

 ある人が『四席懐石誌』と標した2冊子をわしに示した。
視ると吾が天祥院殿(松浦家29代鎮信公)が選び給うたもの。
終りに元禄九子(1696年)9月と書かれていて、御諱があった。
わしの家には却ってこれを伝えていない。

 またここに『四席懐石』と題したのは、思うに公がお銘じになったことではなく、外人の御選著を得て、このような表題にしたのだろう。

 また懐石と云えば、こう銘じたのだろう〔この書は、魚類の部、正月膳附の部、同汁の部、同煮物の部など、四季を次第した〕。
またこの年代を考えると、元禄9年は、公退老の年より8年後で、御年75。
すると隠後の御選である。

またかつて聞いたことである。
カボチャ(菜実の名)、トウナス、薩摩芋等は、今専ら世に食用するものだが、その世間に出たばかりの頃は、人はみな毒物として食用することが無かった、と。
これに就き云うには、公の御書未に記されたことは、

『肴、焼物、珍しい作意品々が有るべし。勘弁すべし。
併(あわせ)ながら、性の宜しからず物カボチャ、唐ナス、薩摩芋の類、紅粉茸(ベニタケ)等、一切用いらず、である。
この外にも性の宜しからず物、餅の類、料理に忌むこと、である。
人の知る物であるので、風流を料理候こと第一である』
と見える。

するとこの頃までは、彼等の品を毒物とみなしていたのだ。元禄9年より、今天保3年(1832年)に至って、137年。

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