続編 巻之25 〔11〕 カツオ釣りの船

平戸藩の村人から聞いた。
近年城下の半里ほど西に行った薄香浦に、天草からカツオ釣りの船に乗り来ている。
初夏に来て秋頃に帰る。
その船は十反帆ばかりで形は天当船の様に、帆柱が三本ある。
だから、逆風が吹いても直行するのだと。
またカツオ釣りには鰯の生き餌がいる。
これをいけすに蓄え、天気を見て、薄香浦西三里ほどの生月島沖ニ三十里ほど出かける。
出かけるのは夕八ツ半(午後3時頃)頃で、夜を通し朝の光の出る頃にカツオの群れに逢う。
釣るのは二時(4時間)ばかりで終わる。
漁獲高が過ぎると、あまりの積載量が元で船は沈んでしまう。
だから、船長は杖を持ち立って、漁師が魚を獲った量を計り、ほどほどのところで止めさせ帰る。
これを守らなければ、船事故に遭う者が出てくるだろうから。
船にはニ十八九人ほどいる。
またこのカツオ釣りは五島領からもやって来るが、やはり漁師の船着き場(釣りの出発地)と釣り場は先に書いたのと同じ。
カツオを釣り、帰港すると納屋で鰹節を作る。
また鰯さえよく獲っている。
漁師の体は田舎じみていて柿で染めた筒袖の半天の姿で、言葉は天草の方言なので、聞いてもわからぬ事が多い。
カツオ釣りをする人は見ないが、そのやり方を見ると、なるほど見事なことよ。
このカツオ釣り、前に記した房総の海釣りとやり方は違えど、趣は同じだろう。
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