巻之七十 一ニ 盗賊いなば小僧

いなば小僧という盗賊。
ある日、奥の宴席で妾采女達が集まって話していた。
聞いていると、いなば小僧が話題に上がっていた。
捕らえられた小僧は、牢に入っていたときに、松浦様の鳥越の屋敷に夜中、盗みに入ったと話したという。
屋根の上から中を窺い見ていると、奥方が一人見台に書物を置いて、見入っておられる。
そのご様子は、いかにも良い家柄の奥様である。
これまで所々の家に入りましたが、よその奥様で殿様が国元でお留守のときに不埒なご様子のお宅が多いものでして。
流石伊豆様の娘御だと思いながら、奥の間に忍び入り、数々ある三味線を探っていると、良い物だと思う品も見当たらずにいると、ふと側の三味線の糸に指が触れ鳴ってしまった。
これには、あっしも驚いたが、人も目覚めてしまった。
だからすぐさま忍び出た。
この話はその時に誰かが聞いて(何処かへ)伝えたようだ。
盗賊が云うことだが、亮鏡院(奥方)の志操人品を暗室の中に人が(入って)見ていたとは!わしもこれまで聞いてはいたが、今初めて喜んだ。(ここでは盗賊があちこち入るのを聞いたが、留守中の奥方の様子を聞いて静山さまは喜ばれたと思うのですが)
糸が鳴った三絃は、春雨後と名付けて先代より伝わる品である。
そのことは、「丙丁○(火編にまま)余」に詳く書いた。
この盗賊のことは、わしが二十歳の頃で、亮鏡院は十七歳の頃である。

公鑑曰。此一条真に銘心せり。走も少時拝顔せしこと、今更不堪感○(火編に倉)次第なり。
(ここの部分はこのままが良いと思いました。)
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