巻之四十八 ニ五 入れ眼

入れ歯は耳にするが、入れ眼があるという。
先年ある歌鼓がそのことを語った。
それを尋ねたら、ある家の奥方が病を得て、片目を失った。
婦人なので深く悩み、眼科に治療を頼んだが、医者から見ても回復はならぬと云った。
奥方はますますもだえ苦しみ、強いて手術を乞うた。
医者は、ならば入れ眼をすることにして、それは出来た。
やり方は、まぶたの間に仏工の用いる玉眼を入れるという。
傍の者さへ真の眼と思った。
かの奥方は大変悦んで、それが玉眼であることは黙っていたので、知る人はいなかった。
ある日その家で宴があって客が多く座っているとき、蜂が屋内に飛んできた。
みなは逃げたのだが、蜂は奥方の眼の辺りを飛んだ。にも関わらず、眼の瞬きがなかった。
この時、人はみなそれが入れ眼なのを知ったのだと。
笑うべき話である。
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