巻之6  〔12〕 続、御留守居依田豊前守のこと

 この豊州の近親がある日早朝に急用があって、豊州の家に行き謁(えつ、目上の人にあってもらう)を乞うた。
直に「奥に通りなさい」との答えだったので、寝間の次まで来ると、豊州は古い白小袖を着たまま出て来て対面した。

 用談が終わって、その人(近親の者)は「いつも白無垢(高貴な者の寝巻)を着られないのですか」と(豊州に)云った。

豊州は「夜中は火事その他いかなる急忙なる事もあるだろう。白小袖を着れば、いざという時に雑人(ぞうにん、身分の低い者)と区別がつかないからな」と答えた。

その気性の気高さ、かくの如しである。
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