巻之17  〔18〕 老狸が紡車に化けた顛末

 領内で猟師が暁前に山野に鹿を打ちに出かけた。
折しも待っている間に向うを見ると、一婦人が紡車を廻している。
木綿を引く体だった。

 猟師はその辺りに人家がないし日の出前なので怪しく思った。
女子の居るような場ではなかったからだ。

 「これは妖だ」と持っている鳥銃でその女を打った。
胸の辺りに中(あた)ったが倒れたりせず、まだ車を廻している。
それでまた二発撃って中るが前の如しであった。
因って猟師は所存(考え)を替え、紡車を狙い撃ちにした。
物音がして倒れた。

 走って確かめるには、大きな老狸で鉛に中って倒れて、その傍らに石を立っていた。
女と見えたのは石で、狸は紡車に幻じて(猟師を)欺いていたのだ。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

百合の若

Author:百合の若
FC2ブログへようこそ!

検索(全文検索)

記事に含まれる文字を検索します。

最新の記事(全記事表示付き)

訪問者数

(2020.11.25~)

ジャンルランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
890位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
歴史
131位
サブジャンルランキングを見る>>

QRコード

QR