2023/03/20
巻之17 〔18〕 老狸が紡車に化けた顛末
領内で猟師が暁前に山野に鹿を打ちに出かけた。折しも待っている間に向うを見ると、一婦人が紡車を廻している。
木綿を引く体だった。
猟師はその辺りに人家がないし日の出前なので怪しく思った。
女子の居るような場ではなかったからだ。
「これは妖だ」と持っている鳥銃でその女を打った。
胸の辺りに中(あた)ったが倒れたりせず、まだ車を廻している。
それでまた二発撃って中るが前の如しであった。
因って猟師は所存(考え)を替え、紡車を狙い撃ちにした。
物音がして倒れた。
走って確かめるには、大きな老狸で鉛に中って倒れて、その傍らに石を立っていた。
女と見えたのは石で、狸は紡車に幻じて(猟師を)欺いていたのだ。
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