巻之31 〔9〕 殿中管弦にて北村季文の歌

 この春、殿中管弦の時北村季文の歌で、文政六年(1823年)弥生二日、御とのの内に御遊びがあった。
上達部、殿上人、その道の御方々、またかしそのともがらまで召し集えられて、大変めずらしいことである。
その日の御事を伝え承って詠む。

   呂 安名尊
皆人のことにぞけふのたうとさを
     よそに聞さへたのしかりけり

   鳥 破
おりしもあれ春も弥生の花ざかり
     まだ見ぬ鳥の声ぞ聞ゆる

   席 田(むしろだ)
めづらしきけふの御あへのむしろ田は
     おりかへしてもあかじとぞ思ふ

   鳥 急  残楽のこころを
春の日のそらにまぎれぬものの音の
     のどかに御代はしづまりにけり

   胡飲酒
世は春のかぜの調に呉竹の
     この国人も酔をすすめて

   律 伊勢海
いせの海清きなぎさのなのりその
     なのりも高し雲の上人

    万歳楽
昔きく南のやまの山びこも
     けふのひびきにいかでまさらむ

    五常楽
糸竹のこゑのうちにもおのづから
     人の道ある世はしられけり
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