続篇 巻之5 〔5〕 林子、隅田川の桜をうたう

 林子曰く。
 花の頃 隅田川へ朝とく(朝早く)行って、人の来ぬ間に花下を徘徊しつつ口吟すれば、

     うへ添し年はよそぢ(四十)を過し来て
     堤の桜花も老いけり

腰折れるばかりの鄙調は云うまでもないが、今この詠みを解す人さえ稀であろう。
老懐は物ごとに感深くぞと覚えけると云々。

 但しこれはこの地の桜、享保(1716~1736年)の御時新たに栽えられたが、年を経て老朽するものも少なからず。
寛政(1789~1801年)のはじめまた栽継を命じられ、その木さえも今は多くのものが老木となってしまった。
ここにて林氏が感懐を興したのは、花のみならぬまた言外の寄托やと、わしはこれの為に感念に堪えられず。
〔林子、角田川百首とて、先年より詠い出した歌を積て数百に及んだと聞いた。未だこれを見ていないが〕。
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