巻之80 〔2〕 大君の御ことば

 ある奥向を勤める人の物語に、
 西城の大奥へ大君の御成りがあった折ふし、若君様を御自ら抱かれ御寵愛になった。
御抱守の婦人の手をあけるまま、御本丸御末子様方一二御側に在られて向かわれた。
何やかやと御相そうなど申し上げたが、やがて若君様を御抱守に返そうと召されたが、その者か御末子様へ申し上げることの半ばとて、その言ばを終わろうとされて、某等に構うことがなかった。
早く若君を抱き奉れとの仰せで渡された。
これよりその者は抱き奉った。
そしてその辺を歩いていると、御末子様方の御抱守も同じようにしている。
若君様に続こうとすると、「その方共は居るように」との仰せであった。

 御嫡庶の御弁別をこう迄、御立てになるかと、その場にあった輩は感じ奉った。

 また常々御末子様など御自ら抱かせ給うことはなかったので、若君様をばいつもこう抱かせ給うたとのこと。
御襁褓(おぶいひも)の時より御威光を添えられた深き御旨なるべしと、ひそかに人々は申し合わせたとぞ〔林話〕。

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