三篇 巻之11 〔6〕 人世の変は不測なるものか

 ある人〔たぶん林先生か〕曰く。
 人世の変ほど不測のものは無し。
この春一時専権の田沼相下世の所、その後領分の山崩れで、余程の損耗が起こって、殊に永荒になった処もあったという。

 また名高い家老の土方某、急に病を得て死した。

 また近頃大川橋の別荘へ盗人入り、その地に貯えていた物件を残らず持ち去ったと。
昨冬まで経営絶え間なかった程であったが、僅か一周年にこうも移り替わるは、不可思議なことである。
凡そ盛んの極まるものは衰えるも、また速やかなる天運なのだろう。

 〔註〕高田の別荘も、数年営築に骨を折られた地であった。
今の嗣候の意見は更に別にして、故侯の事を好まず。
その荘の半分を割って彦根侯に引き渡した。
これ等も事急ぎすぎではないか。
嗣候は三年(ある程度の長い年月や期間の比喩)改まらずと云う文を知らなかったのだろう。

 また近頃故侯の蔵する楽器も、売りさばいて散逸させたという。
その候家は窮乏しているわけでもないのに。
全く新候は諸事を反する故のつもりなのかと、世人は批判した。
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