巻之四十七 十七 麻疹が流行りと文(文家と武門の違い)

近年気候が不順で両三年は諸国は風水旱魃が起こっている。
人身にも影響があって、流行病があれこれ起こっている。
また昨冬は晴れが続き雨雪がなくこの春もずっと晴れが続いていた。
ところが二月末より長雨になり、花時も降り続きで過ぎた。そのためか、春寒が甚だしく、穀雨の時期には人々は厳冬の服を着ている。
その上、麻疹が流行り家ごとに染まっている。
この頃また風邪が一般に流行し、感冒せぬ者はいない。
林翁(幕府儒教学者林述齋)への手紙のついでに「もしやこの流行疾病にかかってはいないかい」と問うた。
その返事の端にこう書いてよこした。
老朽し柳は人になびかねば 世の春風もよきて(よけて)吹くらし
この翁は屈強の身体をしていて、このたわむれは一首の通りである。
が、麻疹は別である。
わしの内の家来老若みなかかってしまった。
わしと他に三人がかかっていない。
わしの年齢は翁より十も上である。
この頃は風邪の流行りで剣技の相手がいない。
日々は弓矢の百、二百筋を射している。けれども、和歌の一首も詠ぜず、不風流なのは、文家と武門の違いである。
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