巻之四十ニ一五 盗賊浜島庄兵衛〈世にいう日本左右衛門〉の事

以前に盗賊浜島庄兵衛〈世にいう日本左右衛門〉の事を起こした。
最近、林氏や人に聞いたので話したい。
庄兵衛は何方へ盗みに入る時も、自身が手を下すことはない。
手下の者を働かせ、己は床机に腰掛けて指図するとのこと。
駿州で夜盗に入る時、そこの町奉行付きの同心が夜周りして怪しんでいると、手下の者が刃を抜いて討ちかかってきた。
同心も心得ていて抜き合わせて、しばらく叩きあうが、庄兵衛は腰掛けながら立つ事もなく、手下の者を使いながら後方より組み留める。さてさて気丈な男かな。
その身の職分を守り、死を決して戦う姿勢には感心する。
かかるけなげなる者に怪我をさせたと、抱き寄せて後ろに場所を移し、全ての盗みの仕事を終わらせてそこを立ち退いた。
また自ら訴え出た後に、懐の中を探ると、その中に正真正銘の朝鮮人参を数根あった。
吟味の与力が「これは何処かで盗んだのではないのか」と問えば、大いに笑い、「我輩とて多くの手下を持てば、もし手を負い血が出た者は独参湯では救いがたい。その用意に買い置いている」と答えたという。
また世に己の紋をつけた黒羽二重の服を着て、雑色の衣服を用いていると。
いかにも気象高いことよ。
太平の世に生まれていればこそ、盗魁(盗人の頭)として終えていくのだろう。
乱日に生まれたなら大国をも治める資質を持った盗賊である(林が語る)。

※昔の人の人を見る目が大きいのにビックリ!
また『気象高い』の表現はそのまま残しました。面白い言葉だと思いました。
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