2023/08/01
巻之100 〔5〕狐珠牛珠
林子の文通に、先に云った、3年ばかり前、営中にて寺社奉行本遠州が、狐珠であるとて、旋毛の物を持ってきて人に見せた。わしもその中にいたので、喜色満顔になって、人みな戯れて必ず吉兆が起こると、とりどり云い合った。
幾程もなく遠州が参政に進んだ。
笑うべし。
またこの〔丁亥〕6月10日、我が身内の赤名孝馬と云う者が、金毘羅参詣とて土橋を行き、路上に狐珠を獲た。
これは純白毛であった。
就(つい)ては狐珠の話を人々が言うのを聞くに、この正月上野にて、これも我が身内の門倉伴助の親類の医師が拾い得たという。
また同所にて5月の事、御用部屋坊主本間伊覚の次男も拾ったという。
この頃寄合の肝煎(人の世話をすること)、大久保四郎左衛門の話に、某家来の親類が、これも5月上野にて得たという。
また同月、中奥御番設楽市左衛門〔林の婿〕が、下谷の途中にて骨董店にあったのを買い得た。
これ等近い所でこの類の話が多いのも不審である。
知らぬ所に幾ばく有るというのか。
ある人は曰う。
「天晴風和する日には、牛は毛珠を吐くことがあるものです。白牛は白、黒牛は黒です。世に狐珠と云うものとこれと少しも違うことは無いのでは。尚まだ何かあれば博物家に尋ねて下さい」。
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