巻之100 〔5〕狐珠牛珠

 林子の文通に、先に云った、3年ばかり前、営中にて寺社奉行本遠州が、狐珠であるとて、旋毛の物を持ってきて人に見せた。
 わしもその中にいたので、喜色満顔になって、人みな戯れて必ず吉兆が起こると、とりどり云い合った。 
 幾程もなく遠州が参政に進んだ。
 笑うべし。
 
 またこの〔丁亥〕6月10日、我が身内の赤名孝馬と云う者が、金毘羅参詣とて土橋を行き、路上に狐珠を獲た。
 これは純白毛であった。
 就(つい)ては狐珠の話を人々が言うのを聞くに、この正月上野にて、これも我が身内の門倉伴助の親類の医師が拾い得たという。
 
 また同所にて5月の事、御用部屋坊主本間伊覚の次男も拾ったという。
 この頃寄合の肝煎(人の世話をすること)、大久保四郎左衛門の話に、某家来の親類が、これも5月上野にて得たという。

 また同月、中奥御番設楽市左衛門〔林の婿〕が、下谷の途中にて骨董店にあったのを買い得た。
 これ等近い所でこの類の話が多いのも不審である。
 知らぬ所に幾ばく有るというのか。

 ある人は曰う。
 「天晴風和する日には、牛は毛珠を吐くことがあるものです。白牛は白、黒牛は黒です。世に狐珠と云うものとこれと少しも違うことは無いのでは。尚まだ何かあれば博物家に尋ねて下さい」。

関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

百合の若

Author:百合の若
FC2ブログへようこそ!

検索(全文検索)

記事に含まれる文字を検索します。

最新の記事(全記事表示付き)

訪問者数

(2020.11.25~)

ジャンルランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
890位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
歴史
131位
サブジャンルランキングを見る>>

QRコード

QR