2023/09/25
巻之59 〔23〕麻疹流行 その1
その1今年江都に麻疹が流行したが、それは各地に広がっていった。
このことは蚤や(はや。はやい、つとにの意)前年の秋のはじめか、わしの西辺の領邑にすでにあったと聞いたので、かねて知る観音柳〔一名御柳〕の庭前であるが、はや霜葉(霜のために黄や紅などに変色した葉)になろうと見えたので、採ってその療用に設ける様、大きな紙袋3つ4つに貯め置いた。それでもその年の末には、都下も少しずつ患る者があると聞いたが、春になると盈々となっていった。
このとき御医中川常春院は一小冊を世に施した。わしもその冊を得たので、今後年の為にここに記しておこう。
『救疹便覧』
凡そ麻疹は陽に属し、清発を好む。これ故に清浄の気を以てこれを助ければ順症となり、汚穢の気に触れた時は麻疹は抑えられ逆症となり、内攻して救いがたくなる。依って清浄を貴び、汚穢を禁忌の第一とする。都て(全部取りまとめての意)麻疹は禁忌を守る事至って大切である。犯す事少しといえども、害を受ける事尤も(もっと)大である。深く慎み守るばし。
禁忌
一、 汚穢不浄の事
一切不浄のものを近づけず、産婦人、忌服ある人、月水の婦人、食穢の人、房事等殊さらきびしく忌するべし。これ故に家内を心の及ぶ程灑掃し、衣服器物を酒濯し、食物等までも浄潔にするべし。香を薫し、汚穢の気のなきようにするべし。若し疹に染まる者あれば、香をたくことをやめ、その余りはなお更清浄にすべし。
一、 風にあたる事
一、 身をひやす事
一、 あせ出るほど厚着する事
一、 湿気ある所に居る事
一、 腹たち怒る事
病人は勿論、看病人迄も腹たちいかり、悪口雑言等かたく慎むべし
一、 入湯、髪月代(さかやき)の事
麻疹とくと平癒の後、凡そ30日過ぎて、天気の能(よき)日に入湯し、その後髪に櫛を入れ、また見合わせ、月代を剃刀(そる)べし
一、 夜更ける迄雑談の事
一、 遠道の事
この2条は、麻疹癒えた後、凡そ100日余りはふかく慎むべし。
続く
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