巻之56  〔24〕二本松の地変

 蕉堂が、二本松侯〔丹羽氏〕の領邑に地変があったので人の死等多くあったと聞いたかと尋ねてきた。

 それですなわち侯の留守にわしの留守居を以て問わせたところ以下の様に返答があった。

 私の領内陸奥国安達郡深堀小屋地所嶽山之内、温泉がありました。湯治人が集まる小屋並びに湯小屋等のある所、去る十三日より大風雨があって、同十五日夜四時頃、温泉北の方鉄山という山のある処の山の中程より崩落しました。上の小屋という小屋は大方潰れ、土中に埋もれました。湯治人並びに同所に居るものに怪我人、即死の人が出たが、速やかなる取り調べが出来かねました。死人、怪我人の人数も分かりかねます。が念を入れて取り調べた上、改めて伝えますので、在所の役人どもより申し来る間に、委細の義は追って改めて御届けいたします。先にこの段にて申し上げます。以上。
       八月廿六日            丹羽左京大夫  

私の領内陸奥国安達郡深堀小屋地所嶽山之内、温泉がありますが、湯治人の集まる小屋並びに小屋等のある処、去月十三日より大風雨に加えて、同十五日夜温泉北之方に鉄山という山のある処の山の中程より崩落しました。これらの小屋という小屋は残り少なに打ち潰れました。土中に埋もれ、湯治人並びに同所に居た者に怪我人、即死人も余程の数に上る様子です。速やかなる人数の確認も取り調べも出来かねました。念を入れて調べましたので、追って届け申し上げます。去月御用番松平右京大夫殿へ御届けいたします。埋められた場所は追々に現れたので分かってきました。調べた次第は以下の通りでございます。
 一、家数十三軒  内十一軒押し埋め、二軒大破
 一、湯坪四ヶ所  押し埋め
 一、六拾五人   死失人。内四十五人男、二十人女
 一、五拾一人   怪我人
 この通り在所役人共より申してきたので、この段御届け申し上げます。以上。
       閏八月十一日           丹羽左京大夫


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