巻之90  〔13〕 古人の短冊 

 この頃京都にて、古人の詩歌俳句等の短冊を集めた小冊を梓行(しこう、刊行)した。

 その中に北村再昌院法印の発句の短冊があった。
 
 福嶋にて   ささにそへてお中ぞふくら雀鮨  
                                季吟

 今の季文の元祖である。俳句珍しとする。
 
また関ヶ原の後、石田等と共に斬られた安国寺の短冊を載せた。
    
 朝鮮に入る船は釜山の裏に浮くこれを賦(詩にする) 恵瓊
 船は朝鮮に泛(う)かび夜は終わらず、    清き波は起興らず尤濃く、
 盃を挙げて道は莫(な)く憂いを忘れ去り、  月は西山に落ち日東を思う。
 
 安国朝鮮の大役に赴き、かの地の賦もまた奇とする。
 
 またその冊の輯(集)撰は浦井某と云う人であったが、この人を世に短冊天狗と呼んで、不思議に古筆の短冊を取り獲て、既に数10余りをを越えた。

 その中先年夢窓国師の短冊を慥(たしか)な所より買い得て蔵(おさ)めた。

 この国師の返歌であるが、近頃またそのかけ歌の花室尼寺の短冊を得て前後備わったとぞ。

 この如く500年間分離した者が再び合わせるは、その求むる所の至るよりして天の助けがあるのだろうと、人を以て嘆賞したとある人が云った。
   
      花室尼寺長老       白短冊
      わが見解によそへてよみたてまつる
   をちこちのうみと雲とはへだつれど
        おなじそらなる月をこそみれ
      
      花室返納         白短冊
   ところがらかはるけしきのある物を
        おなじ空なる月とみるなよ    疎石



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