続篇  巻之3  〔6〕世のうわさ

  伝わる話に、京伏見街道五条を下ると、問屋柏屋と云う大家がある。

  江戸にても本町筋に店が有って、京四条より下にては富豪である。

  この主は40許りで、本妻は三井の娘である。

  それなのにこの6月初旬妾腹に子どもが生まれた。

  顔は人の如くであるが、下は三陵(三角)で、脊には鱗が生じ、髪は白いとか。

  生まれながらに口が達者であった。

 それで生かしておくのは申し分けないと、隠婆(とりあげ婆)はこれを殺そうとしたがどうにもならなかった。

 剰(あまつさ)え「若し我を見せ物にして、または命をとったら、この家は忽ち野原に化してしまうよ」と云った。
 
 これを聞いたらば丈夫な箱に入れて、鉄網を戸に張り、もとより乳はのまないので、焼飯2つ宛(ずつ)食わせ、庫の内に入れて置いた。

 昼夜とも2人ずつ番をしていた。

 これは主人が高台寺の萩見物に往って、かの処にて白蛇を見つけたが、酒興の上で殺したと。

 また土御門の考え方に依ると、山神の祟りにより子どもがこの如く生まれたのでは、と。

 この柏屋は豪家にして、白木屋の一族である。

 柏を分けて白木となる。

 このような風聞にては(家の性の)勢いがくじけ、これより下り坂になるのではないかなどと、みな人のうわさである。 
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