三篇  巻之15  〔6〕勢州の城の地形によって日の出の時刻が異なる

 
 藤堂候は、伊勢国であるが、伊賀もまた領されている。

 また侯の世臣の吉田六左衛門と称して大坂陣以来の名家があった。この家は昔より伝えて軍射の術があった。わしも久しく信仰している。

 さてこの頃、計らずも六左衛門が出府して時々面会し、且つ学んだことがある。ある日の話に、伊賀国の四辺は山囲いで、侯の城地〔これは勢州にて侯の居城とは外である〕は、その中にあった。世に謂うすり鉢の底の様な形勢である。

 わしは「ならば城地は不要害にならないか」と問うた。(六左衛門は)「いいえ。かの繞(めぐ)れる山は、余程隔たっていています。城のある処はまた底に一山あって、その高い処にあるのですよ。だから要害に障りはないのです」と云うた。

 また「この様に回周山であれば、暁の後日光が現れるのは遅くてですね、夜が明けるのも他に比すれば、蚤(はや)くはないですね」と続けた。

  因って勢州を発する者は、日の出以前に行くので、伊州の到っても、未だ日光の挿しこむ前であると。国々の空模様はこの如く殊(こと)なる。

  まずは知ったことである。
 
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