続篇 巻之一 〈一一〉 善光寺の本尊阿弥陀仏

この夏〈丁亥〉、用事があって松代候〈真田豆州〉を訪ね要談が終わり、話が種々に及ぶなか、候曰く。
「善光寺〈信州〉は某の支配処にしていて、何ごとも領内同前に聴いている。またかの本尊阿弥陀仏と云うのは、深秘にして勅封だから誰も見ることはできない。だから、知る人はいない」。
わしは即座に、「だとすれば世に崇詣する仏像はいかに」と問うた。
「この体のものニ三あってみな古の仏体ではない」と。
わしは「この寺のことは明らかににされてないけれども、かつて謙信が奪い取って、今真仏は上杉家に伝わるなどと云うのも信じ難きことぞ。
またかの寺の住持は尼僧で、大勧進と称さる僧は、かの寺にいて寺務を執り行う。
東叡持ちにて天台宗院家くらいの人だと。
また尼僧はこの都の青山善光寺に在院している。
先の尼はこの大勧進と姦通の沙汰があった。
それから主尼の勢いは劣っていき、勧進の権は重くなり、今に公事が絶えないぞ。
当時の主尼は摂家の姫で官家のよせも重く、御間近く拝謁されることもあったとか。
以上のこともみな候の方に訴えでることになるが、裁許は東叡府にてされる。それから寺社奉行の手にも渡る」。
松代候はただ聞くばかりだと話された。
関連記事
スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

プロフィール

百合の若

Author:百合の若
FC2ブログへようこそ!

検索(全文検索)

記事に含まれる文字を検索します。

最新の記事(全記事表示付き)

訪問者数

(2020.11.25~)

ジャンルランキング

[ジャンルランキング]
学問・文化・芸術
890位
ジャンルランキングを見る>>

[サブジャンルランキング]
歴史
131位
サブジャンルランキングを見る>>

QRコード

QR