2020/09/29
続篇 巻之一 〈一一〉 善光寺の本尊阿弥陀仏
この夏〈丁亥〉、用事があって松代候〈真田豆州〉を訪ね要談が終わり、話が種々に及ぶなか、候曰く。「善光寺〈信州〉は某の支配処にしていて、何ごとも領内同前に聴いている。またかの本尊阿弥陀仏と云うのは、深秘にして勅封だから誰も見ることはできない。だから、知る人はいない」。
わしは即座に、「だとすれば世に崇詣する仏像はいかに」と問うた。
「この体のものニ三あってみな古の仏体ではない」と。
わしは「この寺のことは明らかににされてないけれども、かつて謙信が奪い取って、今真仏は上杉家に伝わるなどと云うのも信じ難きことぞ。
またかの寺の住持は尼僧で、大勧進と称さる僧は、かの寺にいて寺務を執り行う。
東叡持ちにて天台宗院家くらいの人だと。
また尼僧はこの都の青山善光寺に在院している。
先の尼はこの大勧進と姦通の沙汰があった。
それから主尼の勢いは劣っていき、勧進の権は重くなり、今に公事が絶えないぞ。
当時の主尼は摂家の姫で官家のよせも重く、御間近く拝謁されることもあったとか。
以上のこともみな候の方に訴えでることになるが、裁許は東叡府にてされる。それから寺社奉行の手にも渡る」。
松代候はただ聞くばかりだと話された。
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