続編 巻之16 〔5〕 銚子沖での異国船の鯨捕り

ある人が北総常陸の辺りに来て、河口、銚子の浦に泊まって沿岸の住民に聞いた話。

5年ほど前、異邦人が三里ほど沖に舟が出入りし、舟の印である小旗を皆巻いて、はだか船の如く碇を下ろして目立たぬ様にして鯨を捕り、その肉を魚膏(膏はあぶらのこと。

魚のあぶら)にしぼる。それを煮煎する燃料に鯨の骨、皮筋を用いた。

魚膏は、田舎から肥し船と名付けて都に来る船の様に、作る中に畜えて置く。

かの国を5月に出て、かせいで8月に帰国するとのこと。

この異国船、初年に来たころは、官の申令は厳しく浦から浦に伝わり、魚長より小舟の漁師まで驚いて領主の耳に入れて、最寄りのお代官に申し通ずる心得となっていた。

ところが、異船から通訳らしい者が、我々は全くの魚膏を得る為に来ているだけで、他に怪しいところはありませんからと漁師たちに(お上に伝えるのは控えてと)云っている。

この為にこちらの方も利益があればと、漁師達は追々内密にして、今では異人は年を経るに連れ沖に益々やって来ては、鯨捕りで稼ぐ事が絶えない。

世の諺、油断大敵と云うべきである。

されどこの位はどうと云うこともなし、その政(まつりごと)に諜報なしと云うことになるのだろうか。

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