巻之四十三 八 蕎麦売りと食い逃げ

注 現代の差別的表記が含まれますが、当時の味わいを活かす為に使用しています。


或る人たちが座談している中での話題。

御小人の某が酔って帰宅時に、夜たか蕎麦売りに逢い蕎麦を食べた。

(お金を払おうと)懐を探ると銭がない!云うには何とも申し訳ありません。

この通り何故か銭がないのです。しかし食い逃げをするつもりは全くありません。

後日払いますから、今日のところは赦していただきたいと頼むと、蕎麦屋も、仰ることはわかりました、貴方が云われる通りにして下さい、と応えた。

そのとき、路の傍らに乞食が寝転がりながら、聴きつけて、今のは黙っていられねえ。

あの身なりの者が銭がないとしても、金1步ばかりは所持すべきだ、と云っている。

それをタダ食いをさせて、代もとらないのであれば、おれ如きならず者には、なぜ、タダ食いをさせないのかいと云う。

蕎麦屋がなるほどと云えば、乞食は起き出して、かの男のあとをおいかけながら、食い逃げ!食い逃げ!といって、追いつき、男に抱きついて、刀を抜いて何処かへ逃げ去った。

その折、ちょうど盗賊改めの某が廻ってきて、この騒ぎを聞きつけ、乞食を組み止めて投げたら、刀が同心の足に当り、いささか手負ってしまった。

某の男(御小人)と同心の家来は近づき、乞食を縛りあげた。

11月下旬のことだという。この評判は良いの悪いのと云っても、まちまちであると聞こえてきそうだ。

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