巻之ニ 〈37〉 人の心を読む僧が震え上がった件

人の心を読む僧が震え上がった件
昔、人の心中を読むことが出来て、思う所を話す僧がいた。
誰も皆見抜かれて返すことばがなかった。

この時、素行先生(山鹿甚五左衛門)が若き日のこと、ある人が「この坊さんに会ってくれ」と持ちかけた。
先生は「会わない」と言うも、会うことになった。
「やむを得ないなあ」と遂に会うが、肝心の僧の様子がいつもと違う。
「今日は(先生の)心中を話すのを御免あれ」と言っている。
先生が「是非承りたい」と言うのに、言わない。
見ている者たちは大いに訝り、先生に尋ねた。「どうしたら、坊さんは言うのでしょうね」。

先生は「私の心に決した物があってこそ、知るは理の当然である。
もしわが胸中を一言でも口外すれば、抜き打ちにするぞとわしは思い切っているのだからな。
さあ、言い出す前に逃げかえるがよかろう」と言ったのだと。

(注)
 山鹿流兵法としてよく知られている 山鹿素行の逸話である。
素行が赤穂に蟄居となったときに。兵法を赤穂藩に伝えたともいわれるが正確にはわからない。
素行は平戸藩主松浦鎮信と親しかった縁で、一族の山鹿平馬が松浦家に召し抱えられ、後に家老となった。
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コメント

No title

山鹿流兵法は今、平戸に一番残っているようですね。赤穂で蟄居していた時に書いた「謫居童問」には日本三大名古城として、九州のたい土城などとともに石岡の府中城を挙げているそうです。山鹿素行の陣太鼓は赤穂浪士討ち入りで有名です。(本当のところはそんな陣太鼓を打ったかどうかはわかりません)

No title

木村 さん
コメントたまわり、ありがとうございます。調べて頂いたのですね。

No title

いえ、山鹿素行については前から興味を持っていて知っていました。平戸に山鹿素行の弟子たちが流儀を伝えていると聞いたことがあります。
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