2020/12/03
巻之ニ 〈37〉 人の心を読む僧が震え上がった件
人の心を読む僧が震え上がった件昔、人の心中を読むことが出来て、思う所を話す僧がいた。
誰も皆見抜かれて返すことばがなかった。
この時、素行先生(山鹿甚五左衛門)が若き日のこと、ある人が「この坊さんに会ってくれ」と持ちかけた。
先生は「会わない」と言うも、会うことになった。
「やむを得ないなあ」と遂に会うが、肝心の僧の様子がいつもと違う。
「今日は(先生の)心中を話すのを御免あれ」と言っている。
先生が「是非承りたい」と言うのに、言わない。
見ている者たちは大いに訝り、先生に尋ねた。「どうしたら、坊さんは言うのでしょうね」。
先生は「私の心に決した物があってこそ、知るは理の当然である。
もしわが胸中を一言でも口外すれば、抜き打ちにするぞとわしは思い切っているのだからな。
さあ、言い出す前に逃げかえるがよかろう」と言ったのだと。
(注)
山鹿流兵法としてよく知られている 山鹿素行の逸話である。
素行が赤穂に蟄居となったときに。兵法を赤穂藩に伝えたともいわれるが正確にはわからない。
素行は平戸藩主松浦鎮信と親しかった縁で、一族の山鹿平馬が松浦家に召し抱えられ、後に家老となった。
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コメント
No title
2021/01/07 09:30 by 木村 URL 編集
No title
コメントたまわり、ありがとうございます。調べて頂いたのですね。
2021/01/07 09:31 by 原田 URL 編集
No title
2021/01/07 09:32 by 木村 URL 編集