巻之ニ十一 〈9〉 ぐらぐら煮えたぎった湯を浴びた狐狸

東叡の山外(上野・東叡山寛永寺と思われる)に伊呂波茶屋がある。
その家の中である時、来客が見ている前で盃台が、何もしないのに空中にあがった。
みなは驚き騒ぐと、今度は行燈、煙草盆の類がみなあがる。
人々は不思議に思い、逃げ帰った。
が毎夜この様子なので、段々と驚くことはなくなった。
却って見物しようと集まった。
然るに、ある夜火鉢にかけてあるよくたぎった湯が入っている鉄薬缶が空中にあがったが、どうしたことか忽ち落ちて、湯ばなが四方に散ったのだ。

これからというもの怪は全て止んだと云う。
従来、狐狸は人を欺くものだが、やけどして己が沸騰した湯を浴びたのに驚き、懲りて止めたか。
咲(わら)える。
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No title

江戸時代、上野の不忍池附近は出会茶屋、いろは茶屋などの歓楽街だったという。
伊呂波茶屋は暖簾に「伊呂波=いろは」の文字を入れていた茶屋で、大阪などでは芝居茶屋であったようだ。ここも芝居茶屋の客寄せにこんな手を使っていたという話と思う。
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