巻之九十六 〈ニニ〉 雹(ひょう)と中禅寺湖水の氷の解け方

ある人の説では、ひょうが降る年は必ず時候がととのわぬと云う。

日光山中禅寺湖水の氷の解け方でひょうが降る、降らないを占うと、違わないと云っている。

湖岸から氷が解け始める年はひょうは降らない。

湖心から解け始める年はひょうが降る、とのこと。

そのことをいつの頃からか、江府市店の漬物屋たちが聞き及び、日光の人に頼み、春になると毎年、氷の様子を聞いている。

ひょうが降らない年は、醤納豆、金山寺の類を塩甘にして稼ぐ算段をする。

ひょうが降ると出た年は、塩を強くするとのこと。

そうすると、気候不調で漬物の味も変わるものだが、あらかじめ予想して、調えておけば、味が変わらない様に感じるのだ。

塩辛ければ、人もさほど賞味しないから(それほど多くは売れないから)、収入は減る、ところだけれども。

されど味が変わり無駄に破棄するよりは、利を失う事にはならない。

商売は人知れずの苦労があるものよ。

珍しい噺なのて、その年の気候を考える為に記した。

(これはこの春に、上州、武州の辺りで、ひょうが降り、麦を撓めた。その前後時候は不調。陰晴冷温、みないつも通りでなく、世間では病人が甚だ多かった。心得ておくべきと、林翁曰く)。

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