2020/05/23
巻之九十六 〈ニニ〉 雹(ひょう)と中禅寺湖水の氷の解け方
ある人の説では、ひょうが降る年は必ず時候がととのわぬと云う。
日光山中禅寺湖水の氷の解け方でひょうが降る、降らないを占うと、違わないと云っている。
湖岸から氷が解け始める年はひょうは降らない。
湖心から解け始める年はひょうが降る、とのこと。
そのことをいつの頃からか、江府市店の漬物屋たちが聞き及び、日光の人に頼み、春になると毎年、氷の様子を聞いている。
ひょうが降らない年は、醤納豆、金山寺の類を塩甘にして稼ぐ算段をする。
ひょうが降ると出た年は、塩を強くするとのこと。
そうすると、気候不調で漬物の味も変わるものだが、あらかじめ予想して、調えておけば、味が変わらない様に感じるのだ。
塩辛ければ、人もさほど賞味しないから(それほど多くは売れないから)、収入は減る、ところだけれども。
されど味が変わり無駄に破棄するよりは、利を失う事にはならない。
商売は人知れずの苦労があるものよ。
珍しい噺なのて、その年の気候を考える為に記した。
(これはこの春に、上州、武州の辺りで、ひょうが降り、麦を撓めた。その前後時候は不調。陰晴冷温、みないつも通りでなく、世間では病人が甚だ多かった。心得ておくべきと、林翁曰く)。
- 関連記事
-
- 巻之七十 二七 喪について
- 巻之九十六 〈ニニ〉 雹(ひょう)と中禅寺湖水の氷の解け方
- 続編 巻之51 〔3〕 狐の祟りも、人の口はまちまち
スポンサーサイト
コメント