巻之八十 一 山神のたたり

ある壱岐の男、久しく対馬に居て隠れ家に住み、某の召使をしていた。

その男が話してくれたこと。

対馬の南方の海辺にけわしい山がある。

高さ1里、廻り3里と云う。

山の土砂は皆、金色だと。

きっと金を出せる山だと。

(対馬の)国人は牛頭天王の山と云う。

しかし、山中にその祠もなく、呼称のみだが、時として忽然と宮祠が現れることがあると。

これを見る人には必ず禍があると云う。

またこの山内は貴人といえども騎乗することはない。

もししたら、忽ち害がある、と。

先年、巡見上使(将軍の代替わりの時に大名領を視察する為に派遣された役人)の時に、その人が騎乗して通行したら落馬した、と。

これは山神の悪する処である、と。

またこの山下に観音院という寺のがある。

この蔵に夫婦貝という一大法螺貝がある。

毎年虫干しの時に、来る人みな見ていく。

の貝は、男法螺貝で、女法螺貝は海底にあると云う。

そのため男法螺貝を吹くことを厳禁にしている。

もし吹くことがあれば、海波が忽ち起こり、大船を覆してしまうと。

だからこれまで、この法螺貝を吹く者はいない。

国人が云う。

あるいは異賊が来る時に吹くと、怒涛巨浪が起こるだろう。

それならば、蒙古襲来を防ぐべきではないか。

果して、そうなのか、否か。

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