2020/05/24
巻之八十 一 山神のたたり
ある壱岐の男、久しく対馬に居て隠れ家に住み、某の召使をしていた。
その男が話してくれたこと。
対馬の南方の海辺にけわしい山がある。
高さ1里、廻り3里と云う。
山の土砂は皆、金色だと。
きっと金を出せる山だと。
(対馬の)国人は牛頭天王の山と云う。
しかし、山中にその祠もなく、呼称のみだが、時として忽然と宮祠が現れることがあると。
これを見る人には必ず禍があると云う。
またこの山内は貴人といえども騎乗することはない。
もししたら、忽ち害がある、と。
先年、巡見上使(将軍の代替わりの時に大名領を視察する為に派遣された役人)の時に、その人が騎乗して通行したら落馬した、と。
これは山神の悪する処である、と。
またこの山下に観音院という寺のがある。
この蔵に夫婦貝という一大法螺貝がある。
毎年虫干しの時に、来る人みな見ていく。
この貝は、男法螺貝で、女法螺貝は海底にあると云う。
そのため男法螺貝を吹くことを厳禁にしている。
もし吹くことがあれば、海波が忽ち起こり、大船を覆してしまうと。
だからこれまで、この法螺貝を吹く者はいない。
国人が云う。
あるいは異賊が来る時に吹くと、怒涛巨浪が起こるだろう。
それならば、蒙古襲来を防ぐべきではないか。
果して、そうなのか、否か。
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