2021/02/04
続篇 巻之十四 〈5〉 御不浄を避ける為の工夫が裏目に出た話といらぬ作法で見たくないものを見せられた話
近頃のこと。ある御屋形が御簾の中、隅田川遊覧のお帰りに堺町を通行された。
定めで、予め内通される事になっていた。歌舞伎の木戸(いわゆる鼠木戸)を皆取りはずすと、外から舞台がよく見え渡り、助六の狂言で幕を開くとなる。
舞台の所作がよく見えるので、御簾中の御輿を不浄所の例えで高くさし挙げた。
すると舞台の様子はうかがえず、ただ軒に掛けられた看板のみをご覧になった。
御供の面々ばかりよく狂言を見たと云う〈後から聞けば、この日の供の輩は邸に帰った後、ことごとく罪を獲て三人が切腹した。
在所へ放遂されたり、職務を免されたりとおびただしく、珍しい事変になった〉。
この話から連なって思い出す事がある。
先年、東に上がった時のこと。
江都(本文ママ)に着く前に品川泊まりなので、八ッ頃、鈴ヶ森を通ろうとする時に、供方が申すには、「道ばたに御仕置きのものがございます。
いかが為せばよろしいでしょうか」。
わし曰く「その御仕置きは何なのか」。答えて云うには「梟首でございます」。
わしはすぐに「頓着せず、通ってくれ」と下知した。
するとその前を急ぎ行くと、これも不浄所の法と云って、駕をさし挙げたのだ!!
獄門台は高く構えるものゆえ、駕の窓の所、あたかも梟首と並んでいる首が近くに見えるではないか〈いかなる刑を受けた者達か、十ばかり並んでいた。
台も三間ばかりの長さだった〉
💢陸尺(ろくしゃく)ども、いらん作法だてをして見たくもないものをわしに見せたのだ💢💢
その品は異なるが、両事一般と云うべきだろう。
(注) 本件は 「御仕置き場」と題して一度投稿しています。
少し訂正してここに採録しました。
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