巻之三十 〈6〉 銚子浦のはなし

世にいう銚子浦は、その地勢が酒器の銚子に似ている故である。

浦の向こうは常陸で、こちらは下総である。
浦の入口の海底はことごとく大石がそば立ちしている。

この地方の方言ガンバラネとはどんな意味だろう。
海底の巌石が水面から見えなければ、船の行き来はかなり神経をつかう。
だから(ここの地理が)不案内だと通行できない。

土地の人の導きで浦を出入りする。
浦の入口の航路は石間わずか廿間ばかりあって、この辺りは厳しさが際立つ。
だから口狭く中が広いから銚子という名になった。

またこの浦底の方は利根川の落口で広さは一里にも及ばない。
この川下の港に人家ニ側に建っていて、やや繁盛の地である。
常州の方はみな農・漁業で、総州の方は諸物の問屋である。
村妓などもあると云うのはここである。

またガンバラネに、先年東海で漂う唐船が乗り掛かり、進退ができなくなってしまった。
それでそこより牽舟を多く出して引いた。
唐船はそこは出たのだが、海底の巌に引っ掛かり舵が利かなくなり横に倒れてしまった。 
荷物はみな沈みかかり、水練者によってなんとか取り上げた。

その船は解体して、唐商人達は我が邦の舟に移して長崎に還されたというのだ。

またこの海には牡蠣が特に多い。
大きさ七、八寸も超えるだろうか。
ここで海中に物が落ちると、一夜の内にこれに牡蠣が着くという。
だから破船等の船具はみな患を蒙る。


※牡蠣が多くいる海に荷物を落とすと、牡蠣が着いて『患』を蒙るとは、現代の感覚とは違っていて面白いです。

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