巻之六 〈13〉 秀逸歌二首

林氏が云った。
近年京より奇人が一人来て和歌を唱えたら、たちまち人々は風靡された。
そして信従する者が多く出たので、官よりひそかに沙汰があり、その人は恐れて京に帰ったと云う。

実は武者小路家の子で、少将までなった人というのだ。
年少にして、豪邁(人より優れている)放逸(気分屋で道からはずれている)なので、三条とか五条とかの繁華街で、人を刃殺して廃嫡となった。
が、姓名を匿して東に来ることになったと云う。
銕山(てつざん)と号した。
唐伯虎、徐文長などの類で、その人は兎にも角にも文采はすぐれているので、その家には恥ずかしくない才と思われる。
惜しむべき人である。伝え聞く歌の中で暗記したのは

    江鶉(うずら)
  秋の日も入江の波は色くれて
       残る尾花に鶉啼なり

     冬杜
  木がらしの吹尽したるもりの中に
      なを枯のこるかしは手の声

この二首などは近世の秀逸とも云うべき歌になるに違いない。
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