巻之五十一 〈5〉 わしの臣医 修徳曰く。

わしの臣医 修徳曰く。
某(それがし)はかつて平戸にいた時、相神浦(あいのこうら、現 佐世保市相浦町)の農婦に女児が産まれた事に接した。
女児には肛門がなく大便は陰戸より出ると。
その児は身体に異常もない。
ただ肛門の在るべき所が少く凹なるだけ。父母はこれを憂え、外科に請いその所を刺し破る手術をした。
大便はその穴より出ず、なお陰戸より通じた。
日を経ずして死亡した。

また近頃『解体新書』、『医範提綱』を読んで初めて惑が解けた。
大便道の大腸は胃腑の下に連なり、胃は飲食を受け、これを醸して腸に輪(まわ)れば、腸は受けてまた調熟し、水穀を分かち精液を血とする。
いわゆる白色乳汁なるものである。

その槽粕は下って肛門に到る。
また小便は腸胃醸熱の精液で、腸より上部の動血脉(みゃく)に輪れば、やや血となり、百骸(多数の骨)を廻養する。
その血中の渣(カス)を腎臓で分かち、尿道膀胱に輪って小便となる。

すると大便は腸より直ちに通じ、小便は腸より上部を廻り関所を越えて尿戸に出る。
よって二道懸隔する。

すると肛門なき者があっても、糞尿ともに出る理はない。
また腸間を塞げば、直に逆流するのを吐糞病とする。

だからかの小児の様な事は、身体であれば生命を落すのも理であるのだろうか。
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